給与デジタル払い|企業側・従業員側から考えるメリット・デメリット

記事更新日: 2021/09/29

ライター: しゅりけん

給与デジタル払いとは

給与デジタル払いとは、銀行口座を介さず、資金移動業者のアカウントに給与を直接的に振り込む仕組みのことです。

資金移動業者とは、銀行以外で送金サービスを担う登録事業者のことで、2021年5月31日現在、国内で80業者が登録されています。

具体的には「PayPay」や「au Pay」「メルペイ」などが該当し、資金決済法において規定されています。

 

しゅりけん

なるほど、今増えている「QRコード決済」の会社は「資金移動業者」と呼ばれるんですね。

 

給与デジタル払いによって、みなさんがATMから出金したり、電子マネーなどにチャージしたりする手間が減り、利便性が向上します。

またこの後述べる背景の通り、銀行口座を開設していない外国人労働者などの従業員への給与払いの選択肢もなり得ます。

 

そして、導入に当たっては、「ペイロールカード」という給与の受け皿を用意し、そこに企業が入金する流れが考えられています。

この仕組みとQRコード決済を連携して、便利に利用できるように考えられています。

 

参考: QR コード等を用いたキャッシュレス決済に関する 実態調査報告書|公正取引委員会参照:資金移動業者登録一覧|金融庁

 

しゅりけん

ちなみに開始時期については、二転三転していて未だ読めない状況にあります・・・

 

給与払いの原則

給与の受け渡し方法といえば、銀行口座への振込が当たり前となっています。

しかし、実は法律上は例外扱いであることをご存知でしたか?

労働条件の最低基準を定めた「労働基準法」では、賃金の支払いについて下記の通り指定しています。

(1)通貨で

(2)直接労働者に

(3)全額を

(4)毎月1回以上

(5)一定の期日を定めて―、支払わなければならないと規定されています。

つまり「現金で手渡し」が法律で定められている方法なのです。

ただし、その後の施行規則の改正で労働者の合意があれば賃金を銀行口座に振り込むことが認められました。

さらに1998年にも規則改正が行われ、同様に合意があれば、証券総合口座に振り込むことがそれぞれ例外的に認められました。

そして今、「デジタル払い」という、もうひとつの例外が加えられる方向で議論が進められています。

時代の変化とともにいろんな方法が認められてきたんですね。

 

給与デジタル払いの導入背景

ではいつからデジタル払いの動きが始まったんでしょうか?

発端は2018年3月の国家戦略特区(地域限定で大幅な規制緩和を行う取り組み)の会議。

この場で、東京都が急増する外国人労働者が銀行口座を開設しにくい現状に触れ、銀行振込に代わるデジタル給与払いを提案しました。

当初は特区という「地域限定」で取り組むはずの施策でしたが、キャッシュレス化を推進する国の意向もあり、全国規模で規制緩和を目指す動きになりました。

目的についても、外国人労働者を主眼に置いた施策から、「キャッシュレス化の推進」が前面に打ち出され、2020年7月の成長戦略に「2020年度中のできるだけ早期の制度化を図る」と盛り込まれました。

結果的に2020年度中には実現できませんでしたが、現在、国は2021年度中の制度化を目指しています。

元々は地域限定で始める予定だったんですね。

外国人もコロナ前はたくさん増えてましたもんね。

また、現在の日本のキャッシュレス決済比率は3割で、韓国の9割以上、イギリスや中国の約7割といった普及率と比べて低くなっています。

そのため政府は、2025年にキャッシュレス決済比率を4割まで引き上げることを目標に掲げ、2019年10月の消費税率引上げにあわせて、中小事業者によるキャッシュレス決済を支援するポイント還元のキャンペーンも打ち出しました。

キャッシュレス決済を進める主な理由として、現金の取り扱いに関するコスト削減と生産性向上、訪日外国人による消費の拡大、などがあります。

そして、今回の給与デジタル払いによって、キャッシュレス決済口座へ直接、給与の振り込みを可能にしてキャッシュレス決済の利用をさらに広げる狙いがあります。

この辺りは少し込み入った話なため、詳しく知りたい方は下記をご参照ください!

参照:成長戦略実行計画|内閣府参照:キャッシュレス・ビジョン|経済産業省参照:成長戦略フォローアップ|首相官邸

 

出典: QRコード等を用いたキャッシュレス決済に関する実態調査報告書 P.12|公正取引委員会参照:2021年3月16日 第167回労働政策審議会労働条件分科会 議事録|厚生労働省

 

 

給与デジタル払いのメリット

企業にとってのメリット

銀行口座の開設が難しい外国人労働者、日雇い労働者、アルバイトなどの非正規労働者に給与を支払いやすくなる

送金手数料を削減できる(資金移動業者の口座への送金は銀行口座への送金よりも手数料が安いため)

個人にとってのメリット

(出稼ぎの外国の方)銀行口座を介さず、外国人労働者が海外の家族へ送金できる

給与デジタル払いのデメリット

資産などの厳しい要件を満たし審査を受けて許可された金融機関と異なり、資金移動業は登録要件を満たせば営業ができます。

また、不正利用に対しても、預金者保護法という法律で定められている金融機関とは異なり、資金移動業の場合、補償内容は個々の会社で決めているため、法律による共通の補償規定はありません。

現時点では、資金移動業者が経営破綻したときの補償や、迅速な払い戻し、資金の保全、ハッキングやセキュリティの不備による不正送金などに対する課題への対応が十分ではありません。

また、100万円の上限があるため、高額な給与の振り込みには適さないというデメリットもあります。

 

この記事を書いたライター

しゅりけん

IT企業で人事をしており、採用・人材育成などを担当しています。

これまでの10年近くの経験から、IT業界や転職に関する情報を発信できればと思っています!

流行りものが好きなので、気になる最新情報も色々とお伝えするかもしれません・・・

この記事に関連するラベル

ページトップへ